芸術祭賞大賞

世界中がそれぞれの思い入れで迎えた2000年の年明けだったが、もう1月も半ばをすぎた。

18日、1999年度の文化庁主催の芸術祭賞授賞式が都内のホテルで行われた。
演劇、音楽、舞踊、演芸、テレビ、ラジオの各部門から選ばれた方たちが、
文部大臣から賞をいただいた。
私も、私の所属する劇団朋友公演「わがババわがまま奮斗記」の舞台での企画演技に対して、
演劇部門の大賞をいただいた。

この芝居の企画は、作家門野晴子さんのご自身の老親介護をテーマにした
「寝たきり婆あ猛語録」等一連の著作を読んだときに始まる。
4年前のことだ。

今を生きる私たちが、横をむいては通れない、今ある現実をみつめた芝居をなんとか創っていきたいと
仲間たちと長い間力を合わせてきた劇団だけれど、門野さんの著作を読んだ時感じた
「人が本当に一生懸命、真剣に生きる時って、
こんなに可笑しくて、こんない哀しくて、こんなに力強いものなのだ」という想いを
舞台化するまでには、凄いエネルギーのいる作業の繰り返しだった。

初日は不安と緊張で息がつまりそうだった。
しかし、幕が開き、お客様の反応の凄さに不安と緊張は、深い喜びに変わった。
あの日から50ステージを超える公演を重ね、
現実に介護をなさっている方を含めたお客様の生の声を聞く度に、
高齢社会の今、行政だけでなく皆で真剣に考えていかなければならない問題が
山積みしていることを更に気づかされる。

授賞式の会場で大きな賞状を胸に私は、先日いただいた未知の方からの手紙を思い出していた。

「舞台を拝見した者です。大賞をおとりになったと知り、わが事のように喜んでいます。
わがババわがまま奮斗記のお芝居をみて、元気になりました。
私もやさしくなろう、やさしくなれる、と思いました。ありがとうございました」

(静岡新聞「窓辺」2000.1.29より)


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