伊豆市民劇場

今、私のパートナー(夫)は
「ジョセフィンー虹を夢見てー」という地人会の舞台で、地方公演に行っている。
レビューの女王ジョセフィン・ベーカーを前田美波里さんが演じるこの芝居が旅に出たのは三週間前
、二月の半ばに東京公演のため戻って来るが、
それを終えるとまた四月まで旅のスケジュールが組まれている。

私も三月から、劇団の「わがババわがまま奮斗記」の旅公演に出かけ、今年は三ヶ月あまり地方をまわる。

この旅公演の受け皿は、全国組織の演劇鑑賞団体で労演、演劇鑑賞会、あるいは市民劇場と呼ばれている。地方でも良い演劇をみたい、見せたいという熱い想いを持った有志たちが立ち上げたこの組織は 、
日本全国に広がっている。

さまざまなメディアの出現によって、何でも手軽に接することのできるこの時代、
劇場に足を運ぶというのは厄介なことかもしれない。
しかし、舞台と客席でしか味わえない生の感動を知っている人たちの力で、
この組織は時代の壁を乗り越えてきた。
私たち演劇をするものにとって、大きな力であり支えでもある。

静岡県下では四十一年前、三島市に創立された伊豆市民劇場が、
演劇鑑賞組織としては全国でも十数番目という歴史を持つ。

ここに「どんちょう」と題された、伊豆市民劇場の四十周年記念誌がある。
五十ページほどのさして厚くないこの記念誌だが、
手づくりのぬくもりの中に四十年の重みが感じられて感慨深い。
芝居が大好きで市民劇場の運営にかかわってこられた歴代の方の談話があり、
創設者の一人として、私が北高校の時教えを受けた佐々木高幹先生が居られるのも嬉しい。
先生は九十歳を超えられたが、今も矍鑠(かくしゃく)として私の芝居を見に来てくださる。

三島ではじまった伊豆市民劇場はその枝を大きく広げ、文化の根をしかりとおろした。
私が「わがババわがまま奮斗記」で静岡県下を旅するのは2001年の初夏のころになるだろう。
今から楽しみにしている。

(静岡新聞「窓辺」2000.2.5より)


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