弥生を演じて10年

今、テレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」の春の二時間スペシャルの収録に入っている。

このドラマは一九九〇年にパート1が始まり、一年間の連続ドラマとして一年置きに放映され、
これまで四シリーズ続いた。

作者の橋田寿賀子先生の目が、しっかりとその時その時代をつかまえているからか、
この激しく変化する時代、岡倉家という一つの家族を軸にしたドラマが、
足かけ十年の歳月にわたって視聴者の支持を受け続けるというのは、凄いことだなあと思う。

私は、岡倉家の五人姉妹の長女、弥生の役を演っているが、二人居る子供も大きくなった。
なにしろパート1で十六歳だった娘のあかりが結婚もし、赤ちゃんもできそうだ。
中学生だった息子の武志も社会人になって結婚し、一児の父だ。
十年ちかい時の流れの中で、弥生一家も波瀾万丈、ほんとうにいろいろなことがあった。

前のシリーズで、子供も思うようになってくれず、
夫とも心が離れて、生き甲斐もみつからなくなった迷いに迷う弥生を演じ続けたときがあった。

「女優さんて、いろいろな役で、いくつもの人生を生きられていいわね」と、
専業主婦の友達に羨ましがられることもあるけれど、弥生の役のように付き合いが長くなると、
あまりみじめな弥生はかわいそうで仕方ない。
まして食事に行ったさきで、隣の席に座った「渡る世間は鬼ばかり」の大ファンだとおっしゃる婦人から
「だけど、このごろ弥生さんどうかしてるんじゃないの? 腹が立っちゃう。もう少ししっかりしなさいよ!」
などとお叱りを受けると、「はい、すみません。でもあれは弥生で、私は役を演じているわけで・・・」と、
小さな声で言い訳してしまうこともある。
かと思うと「弥生さん大変だけど頑張ってね」と励ましの言葉をかけていただくこともあり、
ま、何にしても、それほどこのドラマはたくさんの方に観ていただいているということなのだろう。

今年の秋からは、パート5に入る。
今度はどんな展開になっていくのか。
演じる方も、今からはらはらどきどきしている。

そういえば弥生は、この三月の生まれなのだ。

(静岡新聞「窓辺」2000.3.4より)


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